集中治療医のStudy Melbourne

麻酔科系集中治療医が家族4人でオーストラリア・メルボルンへ博士課程留学!初めての海外研究生活、メルボルンライフの模様をお送りします!

1年経過・研究について

気づけば渡豪そして博士課程開始から1年が経過した。何回かに分けて今感じていることを記録に残そうと思う。

 

今回は研究について。

先日あったPhD confirmationについては前回記事にしたので、研究・博士課程全般に関して書く。

taku-fcb.hatenablog.com

6ヶ月経過時の記録はこちら。

taku-fcb.hatenablog.com

taku-fcb.hatenablog.com

充実の指導体制

前回の記事にも書いたが、

  • 複数の指導教官からフィードバックを受けながらthesisやpublicationを書く
  • 学内や学会発表に向けてラボミーティングでpractice talkする

この環境のありがたさを強く感じている。

 

わざわざ英語圏に大学院留学に来て、そして一旦臨床を離れて研究に専念している意義を一番感じるのがこの点。

 

若ボスが異例の速さで出世しているので忙しすぎて最近少しアクセスが悪いとか、老ボスは半分引退して旅行で不在の機会が多いとか、外部ボスはレジェンドすぎて恐れ多いとか、そんな不安は色々あるけどあと2年この環境を存分に利用させてもらうつもり。

修行を通しての成長

とはいえ、上記の過程には大きな痛みを伴うのは事実。毎回自分がいかに未熟であるかを思い知らされる。

 

そんな状況も楽しめるスーパーポジティブ人間になれれば良いけど、自分はそんなタイプではないので、学びが多くてもキツイものはキツイ。まさに修行を通しての成長という感じ。来てよかったとは思うけど、早くPhDを終えたいなとは思うし、もう1回はやりたくないし、他人にも安易には勧められない。

 

ただしキツいのは決して自分だけではないというのは繰り返し感じること。「PhD=タフなトレーニング」というのは誰にでも当てはまるようだ。

 

実際、他のPhD学生もまあまあボコされているし、指導教官やポスドクたちもPhD時代のキツかった思い出をよく話している。

 

例えば前回のブログに登場した、私が世話になっているポスドクシンガポール人である彼女がライティングを初めて提出したときの指導教官のフィードバックは"Is English your first language?"だったらしい。シンガポール人なのでもちろん英語は第一言語である。彼女の中での鉄板の笑い話らしい。

 

そんな「自分だけが苦しいわけではない」という事実は、時に心の救いになるし、また別の時には「悲劇のヒロインぶるなよ」という戒めにもなる。

 

"Pain is the greatest teacher." とはよく言ったもので、このタフな経験を通して皆一人前のサイエンティストに近づくのだ、と思う。

 

もちろんこれはある程度きちんとした指導を受けている前提。少なくとも私のいる環境では、要求されるレベルは低くないが人格が否定されたりすることは決してないし完全放置されて途方に暮れることもない。ポスドクの彼女だってPhD取得から10年近く経った今でも指導教官とは親子のような良い関係。ヒドい指導教官にあたるとパワハラアカハラ、放置状態で行き詰まってしまう場合もあるらしいので、そういう場合は早めに外に助けを求めた方が良いと思う。

研究1本で生きていく道はない

この1年でほぼ心に決めたのは、研究者として一生暮らしていく道はないということ。研究がよほど自分に向いていれば臨床に戻らずに生きていくものもありかと思っていたが、その選択肢はなさそうだ。

 

一番の理由はおカネの問題。研究者は常におカネ(研究費)の心配をしている。今までの自分がナイーブすぎただけなのだが、自分が想像していたレベルを遥かに超えていた。

ラボを率いる立場の人の苦労は計り知れないし、若手研究者も今のうちに小さいグラントを獲得して実績を積み上げないと将来生き残れない。グラントがなくなればそれは研究室の消滅=仕事を失うことを意味する。

 

科学は真実の追求だ!とかいうけど、結局はおカネがないと研究ができないので、研究費のことが常に話題の上位に来る。

 

1年間彼らの様子を見ていて、これは生涯唯一の仕事にして生きていくことは自分には出来ない気がする、というのが正直な感想。

 

覚悟が足りない、そんな中途半端な気持ちでやるな、って言われるかもしれないけど、やっぱり医師の仕事が恋しいと思うことはたくさんあるし、やりがいも安定した収入も得られる仕事を捨てることはできない。家族のことを考えるとなおさら。

 

でも研究は好きだから、医者をしながら研究を続けるclinician researcherになることが今の自分が目指す道。これがこの1年でかなりはっきりした。

 

将来的に海外で頑張って仕事を続けるか日本に帰るかはまだまだ未定。今は4:6か3:7ぐらいで日本に帰る可能性が高いかなと思っている、なんとなく。

これからの予定

今週はConfirmationを終え少しのんびり過ごしたが、来週からまた再始動。

まず2週間後に所属する研究所のPhDシンポジウムで発表がある。2、3年目のPhD学生50−60人が発表するもの。10分発表、5分質疑応答。内輪の会とはいえ大きな講堂でのプレゼン。どうなることやら。

 

あとは年末にやっていた実験の論文化が待っている。勢いで「6月末までに書き上げます!」と言ったけど多分無理。どうしよう。

 

そして9月には日本で開催される小さな国際学会で発表予定。

これは日本に一時帰国したい旨をボスに伝えたら「この学会に合わせて帰国して旅費請求しちゃいなYO!」と言われたやつ。発表は特に楽しみではないけど、帰国はめちゃくちゃ楽しみ。

10月、12月にはオーストラリアの国内学会での発表も予定している。

 

予定通りにこなせれば2023年の目標は達成できそうかな。頑張ろう。

ある祝日の街中で。クッキーモンスターにクッキーの絵をプレゼントする娘と小学校の友達。