前回の続き
ここでのメインはPre-confirmation meetingの話。practice talkでのドイヒーなプレゼンは間違いなく自分のPhD生活の思い出(トラウマ)の1つになるだろう。
Pre-confirmationとは?
私の大学のPhDコースでは、3年(多くの人が延長して3年半)の間に4回、進捗状況確認のイベント(審査)がある。(多分オーストラリアの大学院はどこも似たようなシステム。)
PhD学生は、開始後1年のconfirmationを突破して晴れてPhD候補生(PhD candidate)になるというのが一応正式なシステムらしい。(ただし少なくともオーストラリアではconfirmationの前後で扱いに違いはない。)
で、pre-confirmationはconfirmationに向けた準備が進んでいるかをチェックする審査。簡単な書類の提出に加えて、20分ほどのプレゼン+質疑応答が基本スタイル。
大学のHPには
Pre-confirmation is a progress review meeting. The purpose of this meeting is to check that you are on track for your confirmation meeting.
そして
Confirmation is a key milestone early in your degree. This process determines whether your intended research project is feasible. It will also indicate your academic preparedness to complete your project.
と書かれている。
ただ実際には、pre-confirmationできちんとfeasibleな研究計画を示すこと、confirmationでは多少なりともデータを提示することが求められる、とのことだった(指導教官談)。
審査をするのはadvisory committeeと呼ばれる3名の外部委員たち。Pre-confirmation meetingまでに自分たちで見つける(指導教官が見つけてくる場合がほとんど)か、見つからなければ大学側が候補を挙げてくれるらしい。私の場合は前者でコース開始後1ヶ月後ぐらいに指導教官から3名に依頼が行き、私からも自己紹介のメールをして承諾をもらっていた。この3人にはPhD生活を通して世話になることになる。
Pre-confirmationは余裕?
説明だけを聞くと恐ろしいイベントに思えるかもしれないが、これらの機会は圧迫面接で厳しく審査、という類いのものではなく、マトモな指導教官の下できちんとコミュニケーションを取ってやっていれば問題なくOKが出るものらしい。むしろ指導教官以外からフィードバックを受けられる貴重な機会だと捉えられているようだ。
特にpre-confirmationは緩めとの話だった。自分の2ヶ月前にPhDを始めたオーストラリア人(プレゼンがかなり上手い)はミーティング後に「めちゃくちゃタメになった」と目を輝かせていたし、コロナ禍にPhDを始めたエチオピア人に至っては資料を作ることなく雑談して終わったらしい。
そんな話をたくさん聞いていたので特別強く意識することもなくひたすら実験に打ち込んでいた。
10月頭に指導教官とcommitteeメンバーにメールを送りミーティングの日程を決定し、翌週から少しずつ準備を始めた。
始めてすぐに「おや?」と違和感を覚えたが、所詮pre-confirmationだし、研究計画のfeasibilityは問題ないはずから大丈夫だろうと考えていた。
が、指導教官から「前週のラボミーティングでpractice talkね」と言われ、いよいよ仕上げなきゃいけないという時期になってようやく気がついた。
自分がマトモなプレゼンをできるレベルにない、と。
Practice talk
そして迎えたpractice talk。brush upされてないけど仕方ない、本番はあくまで来週だから、とか考えながら、その時点でのベストは尽くした。
結果、今まで味わったことのない恐ろしい空気になった。
表現し難いけど…「えー…どこから指摘したらいいかわからんわ」(一同苦笑い)みたいなそんな感じ。
私自身は終わった時点で(というか途中から)で「これはあかんやつだ」と悟る。疲労もあって完全にスイッチオフ。幽体離脱〜。
その後スライド1枚1枚に細かいフィードバックを受けた。当然ほとんど頭に入らず。プレゼン20分を含め45分程度のはずが気づくと90分ほど経過していた。
見かねたメインの指導教官が終了後に「今からマンツーマンでやろう」と声をかけてくれて1時間ほどかけて細かく指導してくれた。「これは複数系、ここ大文字はちょっと違和感」とかそんなことまで。ついでに何をどう喋るべきかも指導を受けた。(許可を得て録音した。)
終了後半ば放心状態で家に帰って、そして帰宅後普通に泣いた←。こんなの大人になって初めての経験だ。
いい歳して情けないが、心と身体が限界を迎えたようだった。
しかし本当に大事なのはここから。これだけ細かく指導してもらってドイヒーなプレゼンを繰り返すわけにはいかない。幸か不幸か、Practice talkがこの上なくヒドかったおかげで思ったより早く切り替えができた。開き直りって大事。(毎日お酒がないと眠れないくらいには追い込まれていたが。)
週末が4連休だったのでうち3日を使ってスライドを丁寧に修正し練習を繰り返した。(日本人の友人にもプレゼンを聞いてもフィードバックをもらった。)
本番の前日には再度指導教官たちの前でpractice talk。ここでようやくマトモなプレゼンができた。
そしてPre-confirmation本番もまあ無難に終わった。先週の地獄に比べればどんなプレゼンもマシだと思えたのであまり緊張もしなかった。
質疑応答も想定していたよりは上手く答えられたと思う。
ちなみにミーティングの流れは、
プレゼン20分→質疑応答15分→committeeメンバーと指導教官たちが話をする(私は退室) 5分→私とcommitteeメンバーで話す(指導教官たち退室)5分→皆で研究内容に関する雑談10分→オンラインフォームに沿って事務的な確認&合格をもらう5分
という感じだった。
まとめ
最初にも書いた通り、practice talkでの失敗はPhD生活のハイライトの1つとして記憶に残るはず。しばらく経てば笑い話として振り返ることになるだろう。でもほんと、死ぬかと思った。
アカデミアに入った直後で英語も不自由な自分は、どんなに小さなプレゼンもきちんと準備して臨まなければならないと学んだ。
そして準備を通して受けた指導は貴重な財産だ。おかげでミーティング本番は無事に終えることができた。ラボメンバーに感謝したい。ほんと、死ぬかと思ったけど。
これからやりたいこと
以上、キツかったこの半年間の、実験で疲弊しプレゼンで打ちのめされた話。
1年目が特にキツいという話はよく聞くのでこれから少しずつ余裕が出てくることを願う。
ラボでの研究以外の話だと、
この半年間はラボ外の人と交流する機会があまりなかったし、大学の主催するPhD向けのセミナーなどにもほとんど参加できなかったので、次の半年はもう少しその辺どうにかならないかなと考えている。
もうせっかく学生に戻ったので、もう少し学生っぽいことをしたあと思う今日この頃である。
おしまい。