集中治療医のStudy Melbourne

麻酔科系集中治療医が家族4人でオーストラリア・メルボルンへ博士課程留学!初めての海外研究生活、メルボルンライフの模様をお送りします!

なぜボスたちはスペシャルなのか

最近、私が所属する日本集中治療医学会が設立50周年を迎えた。その記念としてオーストラリア・ニュージランドの集中治療医へのインタビューするという特別企画があった。

www.jsicm.org

その中の1つに私のPhDの指導教官の1人(このブログでは通称レジェンドボス)へのインタビューがある。

 

彼は40年以上のキャリアの中で1400本以上の論文をpublishしている生ける伝説のような人だ。

 

そんな彼が、日本の集中治療領域の研究が世界に遅れを取っていることをはっきり指摘した上で、自身の経験を交えながら日本の若手の集中治療医がどうあるべきかを語っている。日本の全ての集中治療医が正座して聞く価値のある素晴らしい動画である。

 

特に私の印象に残った話の一つが、彼の自身の仕事に対する思いだ。

 

When I wake up in the morning, I really want to go to work.

 

I really love research. I don't do it as a job.

It is a passion. It really matters a lot to me in a way that is beyond work.

It's about discovery. It's about curiosity. It's about trying to find the truth. It's about honesty. It's about the intellectual challenge. It's about the journay... It's a real pleasure for me.

 

もちろんインタビューだから多少かっこいいことは言っているんだろうが、彼の働きぶりを見聞きしていると9割以上は本当なんだろうと思う。

 

これを聞いて私は「ああ、これが突き抜けた人の考え方なのか」と納得した。そして同時に「自分はこの人のようにはなれない」とも感じた。

 

 

私だって研究をやりたくてやっているし、その基礎作りのために留学に来ている。

 

そこには「困難を乗り越えて何かを成し遂げたい」「新しいことにチャレンジしたい」とかそういうモチベーションがある。

 

だけどそこには自分のやっていることが「大変で辛いもの」という前提がある。

 

だからやっぱり仕事はサボりたいし、朝はゆっくりしたいし、取れるなら長い休暇を取りたい。それをさせないのは自律心であり責任感であり向上心であり、世の中に貢献したいという気持ちである。

 

しかし、私が「自分を追い込んでやっていること」は彼にとっては「楽しくて仕方のないこと」らしい。

 

私は「楽しくて仕方がない」なんて嘘でもいえない。「大変だけどやりがいがあるから頑張ってるよ。こんな環境にいられてありがたい。」が最大限の言葉。

 

 

…そりゃ敵いませんわ。

 

こう思うのは私がまだ下積み段階だからであって、実績を積めば彼のようなマインドセットになる可能性もなくはない。ただ直感的にはそうではない。何かが根本的に違う気がするのだ。

 

私が思うに世の中の99.9%は私のような人間だ。外からはself-motivatedに見える人の多くもそう。というか私だって端から見ればself-motivatedな人間に見えるはずだ。わざわざ仕事を辞めて海外にPhDをやりに来たんだから。

 

 

だけどごく稀に、仕事が楽しくて仕方ない、あるいは仕事を仕事と思っていない人たちがいる。

 

何かとてつもないことを成し遂げる、いわゆるスペシャルワンと呼ばれるのは、そういうマインドセットを持つ人たちなのではなかろうか。私のような人間とやっていることは同じでも、そこには埋められない差がある気がしてならない。

 

自分がレジェンドボスのようになれるとは露とも思ってなかったけど、改めてその違いを実感した。

 

そういえば私の正指導教官(通称若ボス)も「毎朝研究のことを考えて仕事行くのが楽しみ」と言っていたな。彼も異常な速さで実績を積み上げている、スペシャルワンの有力候補である。

 

 

そんなスペシャルな人たちと身近で働けて幸せ、ではあるのだけど。

 

今風に言うと、「憧れるのをやめられません」。ちょっと古いか。

 

 

いや、私みたいなスペシャルでない人間だってそれなりの高みに行けるはずだから、まだまだ頑張りますよ。

 

 

そんな彼の動画、集中治療医でなくても、なんなら医療関係者でなくても研究に関わる人なら見る価値があると思うのでよかったらどうぞ。(4番目がその動画。)

www.jsicm.org