集中治療医のStudy Melbourne

麻酔科系集中治療医が家族4人でオーストラリア・メルボルンへ博士課程留学!初めての海外研究生活、メルボルンライフの模様をお送りします!

研究のこと

久しぶりに研究の話を書こうと思う。

と言っても、正直言ってあまり面白い話はなくて、むしろ若干ネガティブな感じ。

停滞

死ぬほど実験をして、一番最後にコロナに罹り、そのままクリスマス休暇に突入したのが昨年末。

taku-fcb.hatenablog.com

taku-fcb.hatenablog.com

年明けからは心機一転、地に足つけて実験を進めつつ、アウトプットも頑張るぞ!と意気込んでいたが、全く計画通りに進んでいない。

 

一番の問題はPhDの2大プロジェクトの両方が停滞気味になっていること。それぞれについて簡単に状況を書いてみる。

プロジェクト1:11月以降は進捗ゼロ

プロジェクト自体は既に軌道に乗っているが、色々あって11月から全く進んでいない。

 

そもそもこのプロジェクトは、一連の実験1セットを終えるのに1ヶ月以上かかる。同時並行で進められるのも2セットまで、さらにメインの実験には複数の外部協力者が必要、という大掛かりなものなのだ。

 

私がPhDを開始した5月以降、色々キャンセルなどもありつつ、平均月1セットずつぐらいはこなせていた。

 

しかしそれ以降は

12月&1月:早めor長めのクリスマス休暇などで人が揃わないのでなし。

2月:1件は直前でキャンセル。もう1つは初期段階のトラブルでバックアップの別プロジェクトに変更。

3月:スケジュールが合わず3月末までなし。

という感じで進まなくなってしまった。

 

関わる人数が多いほど予定通りに進まないというのを身をもって体感中。

自分の力が及ばない範囲で悩んでも仕方がないので、「まあいっか」と思うようにしている。

 

3月末に次のセットが開始になる予定なので、それが上手くいくことを願うばかりである。

プロジェクト2:プロトコル決めでモヤモヤ

もう1つのプロジェクトは、前段階の実験を12月に頑張ってたやつ。

 

いよいよメインの実験を開始だ!となって、指導教官や他の研究者たちとミーティングをしたところ、プロトコルが大きく変更になった。まあこれ自体はよくある話。

 

でもその過程がちょっとモヤモヤするものだった。

 

モデル動物を用いた医学実験では、実際の医療にどれだけ直接的な関連が強いかとてもが重要。大型動物では特にそう。ラボでも"Is it clinically relevant?"という会話がよくされている。でもモデルはあくまでモデルであって、完璧なものは存在しない。なので、Aの観点を重視すればBがイマイチ、逆にBを優先するとAが微妙、ってことがよく起こるのだ。

 

今回もそんなことがあって、何を優先するか議論になったのだが、ミーティングでは「試しにA重視の実験をしてみて、Bのイマイチさが許容範囲ならそれで、ダメならB重視のプランで行こう」ということになった。

 

そして、いざ実際に実験をしてみるとBが許容範囲を遥かに超えるイマイチさだった。これで別プランになるのかと思いきや、彼らの意見は「このままで行こう」。あれ、話違くない?理由を聞いても納得する答えは返ってこない。

 

その後色々やりとりして、思ったこと。

 

まず、彼ら自分が言ったことをあんまり覚えていない。皆口が達者でいつも感心するのだけど、結構その場の思いつきで喋ってるだけのことも少なくないんだな、と。

 

そして、そんな弁の立つ彼らは論理的思考にも長けてるのかと勝手に思ってたけど、必ずしもそうじゃない。「ディスカッションが得意」というのは「意見や結論を支持する理由を探し出して言語化するのが上手」というだけ。その意見自体は直感や偉い人の言葉に(なんならその場の空気にも)左右されまくるのだ。日本とそんなに変わらない。なんなら自分の発言を覚えてないから平気な顔して1週間前と真逆のことを言ったりする分若干タチが悪いかもしれない。

 

(「オーストラリアの人たち」とラベリングしたいわけじゃなく、あくまで傾向の話です。振り返ると似たようなことはいっぱいあったので。)

 

こういうやり方は決断のスピードを上げて物事を前に進めるのには役立つと思うけど、一方で「自分の発言に責任を持つ」とか「決めたことをちゃんとやる」とか、そんな当たり前のこととコンフリクトが生じることが時々あって、その度にモヤモヤする。

 

考えた方が日本人的すぎるのだろうか?英語力が上がれば「あ、この人今適当なこと言ってるな」とか判断できるようになるのだろうか?

 

多分結局のところ、日本でも海外でも仕事ができる人できない人、信頼できる人できない人がいる。ただそれだけのことなんだろうな。

そして約1年経ってこれまで見えなかったことが見えるようになってきたってこと。来た直後なんて、英語でいっぱい喋ってるだけで皆凄そうに見えた。でももちろんそうじゃない。どの人の、どの発言が、どれだけ信頼に値するのかちゃんと判断しないといけない。

 

そして自分自身については、英語の力やディスカッションの力は上げないといけないのはもちろんだけど、「決めたことは必ずやる」とかそういう日本人的美徳、常識はなくしたくない。

 

...さて、ネガティブな発言はこのぐらいにしておく。

気持ちを切り替えていたけど書いていたら色々思い出してまたモヤモヤしてきた。

 

結局実験は変更したプロトコルでGo!の方針になった。

自分の中でもう一度状況を整理して、他グループの論文も改めて調べて、ボスともじっくり話して、最終的には納得。

 

ただ、倫理審査の変更を届け出たりで当初のプランよりはだいぶ遅れている。これから頑張らないといけない。

ライティング、そして1年審査がやってくる

上記の通り実験が進まなかった代わりに、机に向かう時間が取れたのは救い。コツコツとライティングを進めた。

 

丸一日座って100wordsも書けない日も山ほどあったけど、それでも少しずつ、少しずつ、少しずつ進めてようやく形になった。

参考文献のリストも含めて15,000wordsぐらい。おそらく本文は10,000wordsちょっと。

途中1回フィードバックをもらったけど、これからまたフィードバックをもらって修正して、それを1年審査の前に大学に提出する予定。

 

そして、1年審査confirmation meetingの日程が5月の頭に決定した。

ぼちぼちプレゼンの準備も始めないといけない。もちろんプレッシャーはあるけど、半年の審査pre-confirmationで手痛い経験をしたので、まああれよりドイヒーなことにはならないだろうと思っている。さてどうなることやら。

taku-fcb.hatenablog.com

まとめ

実験が進まずモヤモヤも溜まり、いまいちモチベーションも上がらなかった3ヶ月。

ブログの記事にできるようなことは何もなかった。

 

ようやく少しずつ動き始めたのでまた頑張ろうと思えてきて、筆を取る気になったのがここ1週間ぐらい。

 

偉そうに毒を吐いてて不快になった人がいたらゴメンナサイ。

 

全体としては今働いている人たちも環境もとても好き。

それでも、良いことばかりではない。これが留学生活の現実。

 

PhD取得への道はまだ遠く険しい。