今回は留学先の決め方について、です。
時々「今回の留学先はどのように見つけたのか?」と質問されることがあります。
「同都市(メルボルン)に留学中の職場の先輩に紹介してもらった」が答えですが、そこに至るまでの過程も含めて書きたいと思います。
理想と現実
留学先選びの理想は、やはり
「やりたいことをばっちり決めて、それに合致する研究室や病院を見つけて留学する」
でしょう。(実際このようにアドバイスしてくれる人もいました。)
しかし、現実はそんなシンプルにはいきません。
理由は主に2つあると思います。
理由その1:やりたいことがしっかり決まっていない
そもそも若手医師の場合(そうでなくても)、「とりあえず留学に行きたい」「海外で医者やりたい」「海外で研究をしてみたい」というややふんわりしたモチベーションの人が多くいると思います。
そういう人に「もっと具体的に絞れ」」と言うのは酷ですし、「やりたいことが見つかるまで待て」と言っていたらあっという間に歳を取り留学の機会を逃してしまいます。
理由その2:自分でコントロールできない要素が多すぎる
もう1つ、留学準備中(きっと留学中も)には自分に力ではどうにもならないことがたくさん起こります。
例えば研究留学を志す場合、超ピンポイントな希望に合う研究室があったとしても、そこがタイミングよく人を募集しているとも限らないし、留学先として良い環境である保証もありません(質の高い研究をしている=留学生にとって良い環境である、ではない)。
さらには国の政策、社会情勢にも影響を受けます。(コロナ禍だって誰も予測していなかったはず。今だってロシア・ウクライナ情勢がどう転ぶか分からない。)
その他にも、必要な資格(英語の試験など)、家族のこと、お金のことも考えなければなりません。
留学実現には「運」「縁」「タイミング」といった要素がとても大事なのです。
崇高な理想を追い求めて最初から的を絞りすぎるのは、そもそも留学が実現せずに終わってしまうリスクを上げてしまうように思います。
ということで現実的には、
自分が熱意を持って取り組めそうな範囲内で手広く留学先を探し、実現可能性を見極めながらターゲットを絞る
ことになると思います。
私の場合①
私の場合は「集中治療」の「研究」をしたいというのが希望でした。
もう少し具体的には
- 集中治療:できれば敗血症関連の研究がいい
- 研究:できれば臨床に近め(いわゆるトランスレーショナル研究)がいい ただ実現できないなら臨床でもいいから一度は海外には絶対行きたい
という感じでした。
何をすれば良いか?
具体的にしたことは、
留学経験者や上司に相談する
だけでした。
その時に今回の留学先の紹介を受けたのですが、他にも米国で研究室を持つ日本人の先生を紹介してもらい、食事をしながら話を伺う機会がありました。
また留学先の紹介以外にも貴重なアドバイスを色々もらえてとてもありがたかったです。
その他の方法としてよく知られている(?)のは
- 医局のツテを利用する これ最強
- コースワークに出願する(公衆衛生大学院など) 研究室に所属したり、現地で臨床をやるわけでなければ直接のツテはなくてもないかもしれない
- 現地の資格試験を受験する(USMLEなど):研修医からやり直す志があるなら割と選択肢はあるかもしれない
- 海軍病院経由でアメリカを目指す
- 国際学会で凸する
- 論文やホームページでメールアドレスを調べて直接メールする
などです。下の2つは結構ハードルが高いなあと思いますが、、、
あとは、周りに留学希望があるとはっきり伝えていると、「そういえば今日来る◯◯先生留学経験があるから話聞いてみたら?」ということが結構あります。
そこで話が広がって留学に結びついたという話も聞いたことがありますし、そうでなくても留学経験者の面白エピソードを聞けるのはとても楽しいです。
私の場合②
私がなぜオーストラリアのPhD留学を選択したか、皆さんに聞かれる内容を書いてみようと思います。
なぜオーストラリア(メルボルン)なのか?
- 希望に合う研究室があったから(これはたまたま)
- 大学時代にも2ヶ月半の留学経験あり(シドニー)、新婚旅行でも行ったし、オーストラリアが好き
- 集中治療領域では有名な地域(ANZICSが超有名)
- 日本人麻酔科&集中治療医の留学者も結構いる
アメリカは?
- 面白そうな研究だったし、厳しい競争の中で研究できるのは魅力的ではあった
- ただ経済的には厳しそう(おそらくしばらく無給)で、その間の不安定性で家族を不幸にしてしまう可能性がありヒヨった
- 気候(冬寒い)や治安的にも家族が乗り気ではなかった
- トランプ政権の影響もありビザ取得などのハードルが高そうだった
なぜPhD(博士課程)なのか?
- 将来教育研究機関で働きたいので、国内外問わずPhDの資格は絶対欲しい、そして留学には絶対行きたい
- 時代的に無給での留学は難しそうだし経済的にも家族を不幸にしそうで嫌だ
- そうなると選択肢はPhD、ポスドク、MPH(joint PhDもあったかもしれないが)
- ポスドクでの留学だとこれから日本でPhDを取らなければいけなくて留学時期が遅くなりすぎる
- MPH(公衆衛生学修士)は興味はあるが第一希望ではなかった
- 自分の性格上、厳しい環境に身を置いた方が頑張れる(医師によくある2年程度の研究留学パターンだと結局何もせず記念留学になってしまいそう)
- 結果、海外でPhD取るのが一番良いじゃないかという結論に至った
失敗したこと:早くにターゲットを絞りすぎた
ということでオーストラリアでのPhD留学を目標に動き始め、紆余曲折ありましたが最終的に実現にこぎつけることができました。
めでたしめでたし、ではあるのですが、今から振り返ってみて反省があるとすると、留学のターゲットをオーストラリアのPhD留学に早々に絞りすぎたことです。
プランAしかないとそれがダメになってしまった時、また最初から準備し直しになってしまいます。
実際、途中完全に計画が頓挫してしまった時には、別の留学先を準備していなかったことを相当後悔しました。
上に書いた通り、自分でコントロールできないことが障害になることも多いので、必ずプランB、プランCを並行して進めておくのが良いかと思います。
まとめ
言いたいことのまとめです。
- まずは手広く留学先を探し、実現可能性を見極めながらターゲットを絞る
- 留学実現には「運」「縁」「タイミング」といった要素がとても大事
- 留学先を見つける手段は色々ある(→使えるものは使おう!)
- プランB、プランCを並行して準備をする
です。
皆さんの留学先選びの参考になれば幸いです。